金型管理の適正化が求められている
昨今の製造業での大きな話題の一つには金型の無償保管の問題があります。
経産省、公正取引委員会などの役所もこの問題の解消にかつてないほど積極的に取り組んでいます。
経産省は型管理の適正化に向けて、アクションプランを発表しています。
公正取引委員会の発表によると、2024年度に下請法違反で公正取引委員会から企業に対して21件の勧告がありました。
このうち9件が型(金型、木型など)の無償保管に関するもので、最大の割合を占めています。
このように、金型の管理の適正化はかなりホットな話題と言えます。
これまでブログでも紹介してきたように、当社では金型台帳にNotionを活用しています。
ただ、現時点ですべての金型管理をNotionに移管できたわけではありません。
我々も1000個を超える金型を手元で保管しており、移管作業はいまも続いています。
ただ、この移行作業中でもすでにExcelではできないNotionの便利さを感じています。
Excelでは限界がある情報の伝達
Excelはあくまで「表計算ソフト」です。
一覧表を作って数値や日付を整理するには適していますが、個々の金型に関する詳細な情報を蓄積・共有するには向いていません。
たとえば、過去の修理やメンテナンス内容を一件ずつ記録していくのは現実的ではありません。
Excelでできるのはせいぜい「最終メンテナンス日」を残す程度でしょう。
しかし実際には、何月何日にどんな修理をしたか、どのぐらいの頻度でメンテナンスをしているか、という情報も記録する価値があります。
必要な情報を無理に表の中に詰め込もうとすると、見づらくなり、かえって情報が伝わりにくくなってしまいます。
また、Excelでは写真や動画などの視覚的な情報を効果的に扱うことができません。
「写真を見れば一瞬で理解できる」ケースが多くありますが、Excel管理ではそのような共有が難しく、情報伝達の効率が下がります。
私自身も移行作業のなかで、Excel台帳を見ていて、
「この備考の記載はどういう意味なんだろう?」
「この2つの金型は、どちらも同じ金型のことを指しているようなのに、なぜ別々に記載されているのか?」
等、疑問に感じることが多くありました。
これらの疑問点も、おそらくは何かしら合理的な理由があって記録されたものだと思います。
作成者としては、少なくとも自分が理解できるように情報を残したのでしょう。
しかし、Excelというツールの性質上、残せる情報が限られてしまうため、他の人にも理解できる形で情報を残すことが難しくなります。
その結果、「作成者本人にしかわからない台帳」になってしまうのです。
このように、Excelではツールの構造的な制約からくる“情報の限定さ”が、結果として資料のわかりにくさにつながります。
第三者が見たときに「これは何のことだろう?」と戸惑ってしまうような資料になってしまうのです。
そうなると、情報を共有しようとしてもハードルが高くなり、結局は作成者自身が更新や説明を担い続けることになります。
つまり、Excelでは仕事を分担するために必要な情報量を確保しにくいという限界があるのです。
Notionがもたらす「記録の厚み」
Notionの金型台帳とExcelの金型台帳の最も大きな違いは、集約できる情報の量に他なりません。
Notionでは各金型に自動で「詳細ページ」が与えられます。
一覧表(データベース)で全体を俯瞰しつつ、個々の詳細ページでは過去のメンテナンス履歴、その金型にまつわる背景事情、注意点や使用上のコツ等のTipsなど関連情報をいくらでも残すことができます。
これは複数人で共有する場合だけでなく、一人で管理する場合にも有効です。
100個程度の金型ならまだしも、1000個を超えると、どんな人でも細かい情報をすべて覚えておくのは不可能です。
「なぜこうなっているのか」「以前どう対応したのか」といった情報を、きちんと残しておく必要があります。
移行時に感じたNotionの強み
実例
さて、様々な情報を残せることがどれだけ便利か感じた実際のケースを紹介したいと思います。
金型台帳をExcelからNotionへ移行する作業を進めるなかで、「この現物の金型が、Excel台帳上のどれに該当するのかがはっきりしない」という場面がありました。
つまり、現物と台帳の対応関係が曖昧になってしまっていたのです。
そこで、その現物金型が台帳上どれにあたるのかを調査する必要がありました。
まず実際に当時作ったNotion のページを見てみましょう。

Notionの金型台帳で調査過程を記述している様子
赤く囲ったところが詳細ページで、このページはスクリーンショット中の左側に出ている表をクリックすると出てきます。
詳細ページ中では
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金型現物の写真
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Excel台帳の該当箇所のスクリーンショット
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不明点や考察をまとめたメモ
などが記録されています。
上記のスクリーンショットの範囲外でも、調査の過程やその過程でぶつかった疑問点などが書かれています。
ちなみに、当時は一通り調査してもなお不明点が残ったので、この件については「要調査」タグの付与して、次の作業に移りました。
思考の記録の重要性
移行作業中に出てきたこうした疑問点は、最終的に「誰が見てもわかる台帳」に仕上げていくために欠かせない情報です。
しかし、その情報は決して軽いものではありません。
上記の例では、調査の記録は900文字程度になっていました。
1000以上の金型を管理する台帳をみると、このような疑問点は数十件も積み重なっていきます。
Notionを使っていたことによって、調査の過程をちゃんと記録することができました。
このことは台帳の改善作業に大きな意味があると思います。
Excelではこの情報量は残せず、あとから見直したときにこのことを覚えていられる保証はなかったでしょう。
Excelでは、調査記録を900文字も残すこと自体が難しく、作業履歴や思考の軌跡はどうしても失われてしまいます。
結果として、同じ疑問が繰り返され、改善のサイクルが止まってしまう。
一方で、Notionなら写真・メモ・タグを自然な形で紐づけて残すことができ、疑問点を「放置せずに解消する」ための仕組みが作れます。
そして、それを積み重ねていくことで、最終的には誰が見ても理解できる、質の高い台帳を作り上げることができます。
金型の適正な管理には、誰がみても不明点がない台帳が必要であり、そのような台帳を作るためにはExcelでは力不足です。
この経験を通じて、私は金型の適正な管理のためにはNotionの力が絶対に必要だと実感しました。
まとめ
金型台帳をNotionで管理する最大の利点は、Excelとの情報量の違いに他なりません。圧倒的に多くの情報を有効な形で残すことができます。
Excelでもできることは多いです。
しかし、Excelが表である以上、そこに記載できる情報というのは限定されます。
その限定された環境では十分な情報は残せません。
金型を適正に管理するという目的を達成するためには、Excelの情報量で本当に充分なのかを見直し、Notionをはじめとしたより良いツールがないかを真剣に検討するべきだと私たちは考えています。
私たちKANAGATAYAは、今後も、積極的に情報発信を行っていきたいと考えています。
またそれと同時に
「うちではこうやって管理している」という意見や、
「ブログを読んで実践してみたけど、この部分はうまくいかない」などのご意見もお待ちしています。
それぞれの現場の知見を共有・交換し合うことで、よりよい金型管理の形を探っていければと思います。
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