金型廃棄とマニフェスト、現場で起きている“モヤモヤ”
金型を廃棄するとき、「この金型を捨てました」という証拠が必要になります。
これは様々な理由があり、社内的には固定資産の処分にあたるので経理的な要請から必要になったり、
顧客の要望だったり、理由は様々ですが、何ら証拠書類を残さず金型を捨てるということは基本的にないかと思います。
その際、その証拠として、マニフェストが比較的よく活用されます。

画像の出典:全国産業資源循環連合会 産業廃棄物管理票(マニフェスト)A票
https://www.zensanpairen.or.jp/wp/wp-content/themes/sanpai/assets/pdf/disposal/disposal_manifestA.pdf
(最終アクセス:2025年11月26日)
しかし、現場では金型の廃棄の際にマニフェストを使うかどうかについて、情報の混乱が見られるように思います。
金型を廃棄する事業者(以下、排出事業者)は、何を証拠書類とするべきかよくわかっていないケースが多いかと思います。
「よくわからないが、顧客がマニフェストが欲しいと言ってるからマニフェストを出そう」というような対応も多いのではないでしょうか。
一方で、マニフェスト制度をよく調べてみると、「金型の廃棄の場合ってマニフェストを使っていいの?」という疑問も浮かんできて、
その点でモヤモヤを抱えてる現場の方もいらっしゃると思います。
また、処分業者側も「有価物の買い取り(後述)なのに、マニフェストを使っていいのか?」と疑問に思っているケースも見受けられます。
本ブログでは、金型を廃棄する際にマニフェストを使うということについて、
何が問題になるのか疑問点を整理しつつ、どう対処するべきかなどを前編・後編に分けて解説したいと思います。
最初に結論
さて、前述のように、金型の廃棄の際には、廃棄をしたという証拠書類が必要になります。
その際に、どのような書類をもって証拠書類として扱うかについて、一定の結論を示したいと思います。
まず、この点については、『金型の廃棄』と一言に言っても、
状況によって大きく下記の2つにわけれます。
- 産業廃棄物として廃棄され、廃棄物処理法が適用される廃棄の場合
- 有価物として、スクラップ業者などに売却して処分する場合
このどちらに該当するかによって結論は変わります。
産業廃棄物として廃棄する場合
この場合は特に議論の余地なく、マニフェストを証拠書類として活用します。
後述しますが、金型は基本的は鉄製のためスクラップなどと同様に回収業者が買い取ってくれることが多いです。
しかし、事情によっては産業廃棄物として廃棄されることもあります。
産業廃棄物として廃棄される場合には、廃棄物処理法の要請で排出事業者は必ずマニフェストを発行します。
マニフェストを義務として発行する以上は、廃棄の証明書類として使うのが自然であり、
このケースでは特に疑問はないかと思います。
なお、このブログでは詳しく解説しませんが、マニフェストは、ごみを出す企業が発行するものです。
運搬業者や処理業者が出すものではありません。
例えば、私たちフジイコーポレーションが金型を廃棄する際には、フジイコーポレーションがマニフェストを発行します。
金型を受け取った運搬業者や処理業者がマニフェストを発行するものだと思っている誤解しているケースが間々あるようですので、注意が必要です。
有価物として売却する場合
問題となるのはこちらの場合です。
選択肢
この場合、廃棄の証拠書類として活用できる選択肢としては、
- 運搬業者などが発行す引取を証明する書類
- 金属リサイクル伝票
- マニフェスト
の3つがあるかと思います。
後述のように、マニフェストを有価物の処分の際に活用していいのか?という論点はありますが、
結論としては、活用することはできますので、選択肢に入ってきます。
どれを使うべき?
そのうえで、ではどれを使うべきか?という話が別途あります。
個々の会社のポリシーや、個々のケース事情もありますが、
- 極力、1の引取証明書を活用する
- トレーサビリティが必要な理由があるなら、2の金属リサイクル伝票を優先して活用する
- 1,2どちらでも足りない理由があり、3のマニフェストでなければならない理由があれば、マニフェストを活用する
という運用が良いのではないでしょうか。
なぜそのように考えるかについては、次回のブログで詳述したいと思います。
補足-引取証明書について
ここで引取証明書等について補足しておきます。
金型を廃棄する場合、スクラップなどと同じく鉄として買い取ってもらえることが多いです。
そういった場合、そのスクラップ回収業者がその金型を引き取ったことを証する何等かの証明書を出してくれます
マニフェストなどと異なり決まった様式はなく、各社が独自で発行するものです。
内容としては、引取りの対象物(金型の廃棄なら、金型)が明記され、それを確かに引き取ったことを客観的に示すことができるものを指します。
金属リサイクル伝票やマニフェストと異なる点は、
排出事業者が直接引き渡した業者以降、どのような業者を通じてどのように処理をされたかを確認するための機能、つまり、トレーサビリティがないという点です。
要するに、確かに業者に渡ったことが証明できる書類なら何でも良いので、実務では業者が発行する計量票などが活用されることもあります。
当社でも計量票をもって、証拠書類としたことがあります。
備考欄の記述から特定の金型の廃棄の際の書類だということが確認できれば、証拠書類として十分活用できます。

金型の廃棄の際の計量票。廃棄の際の証拠書類として活用した。
また、業者によっては、独自に金属廃棄証明書を出すなどの取り組みをしているところもあります。
いずれにしても、トレーサビリティがないという点では共通です。
補足-金属リサイクル伝票とは
次いで金属リサイクル伝票について補足します。
金属リサイクル伝票とは、一般社団法人 日本鉄リサイクル工業会が発行している伝票です。

画像の出典:国分金属株式会社 各種証明書・伝票・契約書 | 国分金属株式会社
https://www.kinzoku.info/certification/
(最終アクセス:2025年11月26日)
金属リサイクル伝票の特徴は、マニフェストと同じような仕組みを持っています。
行政に代わり、日本鉄リサイクル工業会がこの伝票の一部を受け取り、処理の過程をチェックし、一定期間保管することでトレーサビリティを確保しています。
トレーサビリティがあるという点で、単なる引取証明書とは異なります。
廃棄物処理法上マニュフェストを発行する義務がないという場面においても、
マニフェストと同じようなトレーサビリティを確保できるというところに特徴があります。
次回に続く
今回は、金型の廃棄の際に、何を書類として使うべきか、という疑問に対して、
- 極力、1の引取証明書を活用する
- トレーサビリティが必要な理由があるなら、2の金属リサイクル伝票を優先して活用する
- 1,2どちらでも足りない理由があり、3のマニフェストでなければならない理由があれば、マニフェストを活用する
という見解を提示しました。
次回のブログでは、そもそもなぜ「何を書類として使うべきか?」という点が問題になっているのか、
どうして上記のような結論に至ったのかについて説明していきたいと思います。
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