■ 同じ力を受けても壊れ方はまったく違う
今回は、材料の機械的性質の違いが非常によく表れた事例を紹介します。
まず下記の写真を見てください。
ダイホルダーが反っているいるのが見て取れます。
また、バッキングプレートにはひび割れが確認できます。


この金型は、高さ調整のためのライナーの積み間違いにより通常より高い状態でプレスされ、
上型と下型が想定以上にぶつかってしてしまった案件でした。
その結果、想定以上の荷重が金型にかかり壊れてしまいました。
ただ、今回は破損した金型の各パーツの壊れ方の違いが参考になるので、紹介させていただきます。
金型部品ごとの破損の仕方の違い
■ ダイホルダーは「曲がって耐えた」
ダイホルダーは明らかに弧を描くように変形しています。

■ バッキングプレートは「砕けた」
一方で、バッキングプレートは粉々に砕けています。

両者の違い
ダイホルダーも、バッキングプレートもどちらも金型の部品としてもう使えないという点では共通ですが、
同じだけの力を受けたのにあまりにも状態が異なります。
このことは、金型に使われる部品と、その部品の特性にあった材質の選定がもたらす違いとしてとても興味深い例に思えます。
各部品の素材について
■ バッキングプレートの素材について
バッキングプレートとはなにか?という点については下記の過去のブログをご参照ください。
バッキングプレートの役割は、小径の金型部品がプレス機からの力を伝えると、面積あたりの力が強いため他のパーツをへこませたりすることを防ぐことにあります。
そのため、そういった力への抵抗力が強い「硬い」素材がバッキングプレートには使われます。
そして一般的に、「硬い」素材は、「靭性が低い(=脆い)」傾向があります。
脆い素材のバッキングプレートは、プレス機からの力に耐えることができず、粉々に砕けてしまいました。
■ ダイホルダーの素材について
一方で、ダイホルダーにはバッキングプレートに求められるような硬さは必要ありません。
SS400等ある程度靭性がある(つまり粘り強さのある)素材が使われます。
この特性により、(バッキングプレートに比べて)靭性が高いダイホルダーはプレス機からの力を受けて変形はしましたが、破壊は免れました。
■ この事例が示していること
今回の事例は非常に示唆的です。
同じ異常荷重を受けたにもかかわらず、
| 部品 | 材料特性 | 結果 |
|---|---|---|
| ダイホルダー | 靭性が高い | 曲がって耐えた |
| バッキングプレート | 硬くて脆い | 割れて砕けた |
つまり、
材料の違いによって「壊れ方」そのものが変わる
ということが、目で見て理解できます。
■ 硬さと靭性の関係の補足
ここは誤解されやすいので整理しておきます。
硬さと靭性は異なる指標であり、硬い=必ず脆いではありません。
ただし傾向としては、
硬い材料ほど靭性が低くなる傾向がある
というのが一般的です。
■ まとめ
この事例は単なる破損事例ではなく、
- 材料選定の意図
- 機械的特性の違い
- 壊れ方のメカニズム
が一度に理解できる、非常に良い教材です。
金型は「全部同じ鉄の塊」ではなく、
部位ごとに役割があり、意図的に材料を使い分けている
ということがよくわかります。

