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2025.11.19

業務改善提案

「紙の形をしたExcel」、もうやめませんか? ─ 稟議書に見る“仕事っぽさ”の罠

はじめに:業務改善のネタは身の回りにある

業務改善というと、AIやRPA、クラウド導入といった「大きな変化」を想像しがちです。
しかし実際には、日常の中にこそ無数の改善のヒントがあります。

今回は金型の話から少し離れて、ふと気づいた「これって、こうである必要があるのか?」というテーマを取り上げてみます。


 

稟議書の「紙を模したExcel」問題

下のような書式、どこかで見たことがあるのではないでしょうか。

Excelで作られた稟議書のサンプル画像

Excelで作られた稟議書のサンプル画像

上記はマネーフォワード社が公開している稟議書テンプレートを例にしたものです。
当社でも、これと似たような形式のExcel書類がいくつも使われています。
見た目は整っていて、一見問題なさそうに見えます。

しかし、私は以前からこの手の書式に「使いにくさ」を感じていました。
たとえば──

  • 文章量が増えると枠に収まらなくなる

  • 稟議番号や日付の更新をうっかり忘れる

  • レイアウトを崩さないように気を遣う

そもそも、なぜ稟議書をExcelで作るのか?

Excelは非常に便利なツールですが、万能ではありません。
とくに画像や長文テキストの扱いは得意ではなく、
稟議書のような「文章主体の書類」には、正直あまり向いていません。

そこで、同じ情報をWordで作ってみたとします。

Wordで作られた稟議書のテンプレート。非常にシンプルな構造をしている。

Wordの稟議書のテンプレートの例

見ての通り、情報量はExcel版とまったく同じです。
むしろ、縦に項目が並んでいて見落としも少なく、画像も自然に挿入できます。
操作もシンプルで、Wordのほうがずっと合理的ではないでしょうか。

それでも「Excelのほうが書類っぽい」と感じる理由

一方で、Word版の稟議書を見ると、
「なんだか簡素すぎて安っぽい」
「正式な書類に見えない」
──そう感じる方も多いのではないでしょうか。

そう感じること自体は普通のことで、むしろ多数派の意見だと思います。
しかし、考えてみると、それは内容の問題ではなく、“見た目が紙っぽくない”からにすぎないのではないかと思います。
つまり、書類の内容という本質的な部分ではなく、“書類っぽさ”という形式的な部分だけを評価しているにすぎないかもしれません。

「仕事っぽさ」のために、わざわざ複雑にしていないか?

よく考えると、Excelで作られた書類の多くは、“仕事をしているように見せているだけ”なのかもしれません。
稟議書の目的は、本来「内容を明確にし、承認を得ること」です。
しかし現実には、「それっぽい書式で提出すること」自体が目的化してしまっているケースが少なくありません。

旧来の紙書類をそのまま再現しようとするあまり、入力項目があちこちに散らばり、見出しや罫線の配置に気を遣い、セルの結合や調整に時間を取られる。
果たして、そこにどれだけの意味があるでしょうか。

ここで誤解してほしくないのは、「Excelで書類を作るな」という話ではありません。
問題は“見た目をそれっぽく整えるだけの仕事”に時間を使っていることです。

たとえば、見積書をExcelで作るのは理にかなっています。
数値計算が必要であり、計算式を埋め込むことで効率的に運用できるからです。
また、見積書は社外に提出する書類であり、一定の形式美を保つことで信用を得るという側面もあります。

一方、稟議書は社内で承認を回すための文書です。
外部への印象よりも、内容の明確さとスピードが重要なはずです。
それにもかかわらず、“仕事っぽさ”だけのために複雑な形式を維持しているのは、
まさに不毛な“形式主義”と言えるでしょう。


 

おわりに:形式を守るより、目的を果たす書類を

私たちは長年、紙文化の中で「きちんとした書式こそが正しい」という感覚を身につけてきました。
だからこそ、デジタル時代になっても無意識のうちに「紙っぽさ」を再現してしまうのだと思います。

けれど、仕事の目的は“きれいな帳票をつくること”ではなく、“意思決定を早く、正確に行うこと”のはずです。
形式を守ることが目的化してしまった瞬間、その業務は本来の意味を失います。

Excelでつくること自体は悪ではありません。
しかし、「なぜこの形式なのか?」「もっと簡単にできないか?」という問いを止めてしまうことが、
結果的に改善のチャンスを奪ってしまうのです。

まずは、紙を模したレイアウトや“それっぽさ”を一度疑ってみること。
それが、本当の意味での業務改善の第一歩だと思います。