いま、金型の「情報共有」が求められている
製造業の業界では金型の無償保管の問題はとても注目度が高い問題です。
2024年度に下請法違反で公正取引委員会から企業に対して21件の勧告がありました。
このうち9件が型(金型、木型など)の無償保管に関するもので、最大の割合を占めています。
このような無償保管の問題を解消すべく経産省も積極的に活動してます。
経済産業省が公表している「型管理運用マニュアル」では、無償管理を解消するためには受託側には型の適正な管理が必要だと説いています。
実際、金型の預かりの現場では、顧客から預かってる金型を十分に管理できていないことが多く、管理できていない後ろめたさが保管費の請求を心理的にやりにくくさせてる側面があることは否定できません。
型管理を適切に行うことは、無償保管問題の解決に必ず役立ちます。
そして、型の適切な管理については、
型管理には、部品(製品)の製造に伴い発生する、型の発注~廃棄/返却/保管までの入出庫や使用の記
録、状態の維持や必要時の修理・メンテンナンス、廃棄/返却/保管に関わる発注側企業・受注側企業間の
情報のやり取り及び状態報告も含まれます。
とされ、単にどこにあるか?という情報だけでなく、メンテナンス情報など広く金型に関する情報を委託者と受託者が共有することが求められています。

情報共有のためのNotionの活用
このような流れの中で、私たちは金型の台帳を「情報を共有できる状態にすること」こそが金型管理のためにとても重要だと考えています。
これまでにもブログで、Excelを共有することで金型台帳を共有する方法を紹介してきました。
これらは、クラウド化の入門としては非常に有効です。
ただ、実際に我々が社内で使っているのは、Excelでもスプレッドシートでもなく、
「Notion(ノーション)」というツールです。
Notionは様々な情報を記載・保存し、それを社内・社外に共有することができるとても優れたツールです。
このNotionは日本の製造業だと、TOYOTAや三菱重工などの大手企業にも導入されています(各社の使用事例の紹介はこちら)
当社で使っているNotion製の金型台帳
言葉で説明するよりも、実際に見てもらうのが早いと思います。
以下のリンクから、サンプルの金型台帳が閲覧できます。
👉 サンプル金型台帳を見る(Notionページ)
(※当社の実際の台帳をモデルとして、公開用に再構成したものです。入力されている情報は全てダミーです。)
この台帳の見方
ページを開くと、いくつかの金型が一覧で並んでいます。
(※2025年10月現在では3件のみ掲載していますが、順次増やしていく予定です)。
金型の型番、製造する部品に関する情報、その金型を最後に利用した日とその日から今日までの経過月数、保管場所などの情報が並んでいます。

金型の管理に必要そうな情報が表で管理できているのがわかると思います。
ちなみに、「経過月数」のところは関数が埋め込まれており、最終利用日から閲覧している日までの何か月経過しているかを自動で計算するようになっています。

特に注目してほしいポイント-Notionで管理をする意味
台帳のトップページに表示される一覧表も重要ですが、それだけであればExcelで管理するのとあまり変わりません。
しかし、Notionではこの「一覧表」は出発点に過ぎません。真の価値はその先にあります。
Notionの強みは、一覧表の各要素(=金型ひとつひとつ)に紐づいた「詳細ページ」を持てることです。ここがExcelでの管理とは違うところです。
一覧表を起点に、ページをたどっていくことで関連する情報をまとめあげることができることにNotionの真価があります。
この点については、まず下記の動画をみていただくとわかりやすいかもしれません。
Notionでの金型台帳のサンプル動画
上記の動画で見ていただけるように、一覧表の管理番号のところをクリックすると、各金型の詳細ページが表示されます。
そこには金型の写真や各種情報、関連資料、メンテナンス履歴などがまとめられてるのがわかります。

金型台帳のサンプル
関連資料はGoogleDriveへのリンクとなっており、それをクリックするとその金型に関連する契約書や図面などといった資料にアクセスできます。
またメンテナンス履歴については、作業を行うと作業報告として更新を行えます。
メンテナンス履歴にある個々の履歴をクリックすると、その作業内容を確認することができるようになっていたことがご覧いただけたかと思います。
このようにリンクをたどり様々な関連情報を紐づけ情報を集約することができる。
これがNotionで管理を行うことの最大の利点です。
顧客との共有
今回のサンプル台帳は、一般公開用として誰でも見られるようにしていますが、
実際の運用では、顧客に限定して共有します。
つまり、その金型を預けてくださってる顧客の担当者だけを招待し、閲覧してもらいます。
ここであらためて型の適正な管理とは何だったかを確認します。
型の適切な管理については、
型管理には、部品(製品)の製造に伴い発生する、型の発注~廃棄/返却/保管までの入出庫や使用の記
録、状態の維持や必要時の修理・メンテンナンス、廃棄/返却/保管に関わる発注側企業・受注側企業間の
情報のやり取り及び状態報告も含まれます。
と経産省がその資料のなかで述べています。
Excelによる管理だけでは、記録できる情報に限界があります。最終メンテナンス日ぐらいは記載できても、過去のメンテナンスの履歴やメンテナンスの内容まで情報共有することはできなかったでしょう。
しかし、ここで紹介したNotionで金型台帳を作り、それを顧客と共有すれば、金型の保管状況などだけでなく、メンテナンス履歴や内容、発注時の契約書、図面などその金型に関連するすべての情報を集約でき、わかりやすく、しかもリアルタイムで共有することが可能となります。
顧客側からみれば、自分たちの金型が受託先でどのように管理されているのかわかるだけではなく、そこに情報が集約されてるので金型に関する情報が必要になったときにNotionの台帳にアクセスすればすべてわかるという期待ができます。金型を預けている側からすると、これほどありがたい管理方法は他にないのではないでしょうか。
まとめ
今回は、当社が取り組んでいるNotionによる金型台帳のクラウド化について紹介しました。
当社でもそれなりの数の金型を預かっています。多くの金型を預けてくださっている顧客に対してはまだこのNotionによる金型台帳に移行できていないところあります。
そういう意味ではまだ道半ばの取り組みではありますが、自社と顧客との間での預かり金型に関する情報のやり取りを劇的に進化させられる取り組みです。
金型の管理が適正に行えるようになれば、無償保管の問題も自ずと解決に向かっていくと信じています。
ぜひ、皆様の現場でもご参考にしていただければ幸いです。
私たちKANAGATAYAは、今後も、積極的に情報発信を行っていきたいと考えています。
またそれと同時に
「うちではこうやって管理している」という意見や、
「ブログを読んで実践してみたけど、この部分はうまくいかない」などのご意見もお待ちしています。
それぞれの現場の知見を共有・交換し合うことで、よりよい金型管理の形を探っていければと思います。
もし、「こういう話題について書いてほしい」「直接会ってもっと多くの話を聞きたい」「勉強会を開いてほしい、勉強会に参加したい」などのご要望があれば、
ぜひお気軽にこちらからお問い合わせください。

