はじめに:これまでの流れと、今回のテーマ
これまでこのブログでは、金型台帳のデジタル化、クラウド化していく方法やNotionなどの具体的なツールの紹介してきました。
10月中に公開しただけでも下記のものがあります。
- 金型管理のデジタル化について
- 金型台帳のクラウド化の重要性について
- 金型台帳のクラウド化実践例ーExcelの共有ー
- 金型台帳のクラウド化を低コストで実現する方法
- 金型管理の課題を解決。NASの限界を超えるクラウド運用とは。
- クラウドで金型台帳を一元管理|Notionを使った管理方法と実例公開
今回は、その背景にある考え方──
「なぜNotionで管理することが大事なのか?」という、背景にある考え方の部分に踏み込みたいと思います。
管理は、そもそもうまくいかないもの。
まず前提として、物の管理というのは基本的にうまくいかないものです。
これは、金型に限らず、部品の在庫でも、書類でも同じだと思います。
原因はシンプルで、
「ものを動かすこと」と「動かしたことを記録すること」が別の作業になっているからです。
しかも、実際にモノを動かす人にとっては、台帳とズレても直接的なデメリットがあまりありません。
だから、更新のモチベーションが上がりません。
この構造的な弱点がある以上、台帳と現実は乖離する運命にあると言ってもいいでしょう。
理想の管理とは?──自動更新か、更新しないと動かせない仕組み
ではどうすればいいでしょうか。
究極的には、
-
動かしたら自動で記録される
-
記録しないと動かせない
このどちらかの仕組みがあれば、理論的には管理は崩れません。
ただ、前者はシステムコストが高く、後者は利便性が著しく下がります。
結局、“難しい”という事実は変わりません。
管理が難しいことを、まず理解する
上記までを踏まえ、ではどうしたらいいか?という話ですが、
まず大前提として、モノの管理は本来うまくいかないものだという理解を、管理者側が持つ必要があります。
台帳と現実が乖離した時、「なぜちゃんと管理しないんだ?」と現場に言うだけでは何の意味もありません。
何か工夫をしなければそうなるのは最初からわかっていることです。
にもかかわらず、何も工夫をしないで失敗し、現場に「何をやってるんだ」というだけでは、あまりにも芸がありません。
まず、管理というものは十分な工夫や努力がなければ、失敗するものだ、という現実認識が出発点になります。
中には、更新作業をまめに行い、台帳を常に最新の状態に維持できる人もいます。
でも、それは端的に言えば「偶然」です。個人のまめな性格に頼った非常に脆弱なものです。
属人的に支えられている管理体制は、長期的には必ず破綻します。
つまり、何もしなければうまくいかないのだから、
どうやって続けられるようにするか、という発想が必要になってきます。
そこを理解しない限り、どんな台帳も長続きしません。
クラウド化の意味:面倒を減らすことが目的
これまでこのブログでは、「クラウド化」や「Notion化」の話をたびたび取り上げてきました。
それらの本質的な価値は──**“楽になること”**です。
前の章でも述べたように、管理を成功させるには工夫が必要です。
しかし、その工夫を実行すること自体が大変であれば意味がない。
結局、続けられる管理を実現するには、作業者ができるだけ楽に動ける仕組みを選ばなければなりません。
どこからでもアクセスできる。それがクラウド化の本質
クラウド化とはつまり、「どの端末からでもアクセスできる」状態をつくることです。
十分にクラウド化されていれば、
現場で金型を移動したその瞬間に、スマートフォンを開いて台帳を更新することができます。
一方で、特定のPCでしか更新できない仕組みだったらどうでしょう。
「ちょっと事務所に戻ってPCを操作すればいいだけじゃないか」と思うかもしれません。
けれど、それはあまりにも現場の実際をわかっていないと言わざるを得ません。
「面倒だな」と思われた瞬間に、更新は止まる
物理的な負荷でいえば、PCまで歩くことも大した違いはありません。
時間的にも、たかが数分の差でしょう。
でも、心理的な負荷はまるで違う。
人は「面倒だ」と感じた瞬間に、その作業を後回しにします。
そして「あとでやろう」と思ったことは、たいてい行われない。
更新を“やるべき時にすぐにできない体制”は、更新が途絶えるよう設計されているのと同じです。
スマートフォンで完結できる環境を
だからこそ、現場ですぐ更新できることが何よりも大切です。
PCの前に座っている時間なんて、ほんのわずか。
むしろ、作業場や移動中、立ち話の最中など──
スマートフォンを片手に情報を扱う場面こそ、日常の中心になっています。
だから、モバイルで編集できるNotionのようなツールは、
ただ便利というだけでなく、「更新を続けられる仕組み」そのものなんです。
Excelでは限界があり、Notionのほうが向いている。
Excelも優れたツールです。
しかし、最大の欠点は有用な形で記録できる情報が少ないことです。
つまり、たくさんの情報を見やすい、読みやすい形で記録しておくことには全く向いていません。
金型管理は、その金型がどこにあるか?というだけではなく、いつ最後に使われたか、メンテナンスの履歴、その金型で生産する部品に関する情報等のように情報量が多く、関係性が複雑なデータには構造的に不向きです。
また、モバイル端末からの更新を考えたときにExcelは使いやすいものではありません。
不向きなツールを使わなければならないのは苦痛です。
Notionは、その点、情報を集約しやすいツールになっています。
これがNotionを我々が採用している理由です。
使いやすいから、継続しやすい、というわけです。
「仕事は苦行である」という文化を捨てよう
日本の中小企業には、「仕事は大変で当たり前」という空気が根強くあります。
でも、それでは管理は続きません。
“楽にやる”ことは、怠慢ではなく戦略です。
「苦労するほど価値がある」とか「仕事なんだからちょっとした不便でも我慢しろ」という考えではどんなツールを導入しても運用は止まります。
現場の人が、スマホひとつで完結できる仕組みを整えること。
それが今の時代の「ちゃんとやること」です。
Done is better than perfect ─ ないよりはあったほうがマシ
そして最後に大事なのが、この言葉。
Done is better than perfect(ないよりはあったほうがマシ)
直訳すると、「完了していることは、完璧であることより、良い」という言葉ですが、
つまり、不完全でもいいからともかく完了していることの方が大事だということです。
不完全さを積極的に許容する姿勢が重要です。
たとえば、実例をお見せすると、下記の写真をみてください。
金型が写っており、『C-8-1』と書かれています。

金型写真のサンプル
C-8-1というのは、この金型が入ってる倉庫の棚の位置を示しています。
写真を撮ったあと、写真の編集機能でスマートフォンから手で書き込んだものです。
我々の金型台帳には、現在地確認作業を行った際の情報も記録されていますが、その際の作業記録として、この写真が掲載されています。
C-8-1という文字はフリーハンドで書き込んでますので、お世辞にも綺麗とはいえないでしょう。
あとでPCで画像編集すればもっと綺麗にC-8-1と記載できます。
しかし、これでいいのです。
ちゃんと読めますし、この位置情報が「きれいな文字で書かれいる」ことに一体どれだけのメリットがあるでしょうか?
単に「書かれている」だけで十分ではないでしょうか。
綺麗に書かないといけないという負担を課すことで結果的に写真が掲載されなくなるリスクを冒すことの方が問題です。
Done is better than perfect です。とりあえず、それなりのものがあれば、OKなのです。
それが管理を続けるコツです。
顧客に見せるデータだからきれいに──という気持ちはわかります。
でも、顧客が本当に求めているのは「きれいな資料」ではなく、最新の情報です。
そして最新の情報を維持し続けるための作業はできるだけ負荷が軽くなければいけません。
大したメリットもない見栄えだけのことにリソースを割く判断をするべきではありません。
まとめ:続ける力をつくるのが管理
金型の管理というのは工夫なしでは必ず失敗するというところを出発点にすると、何をするべきだろう?という視点が生まれます。
その時に重要なのは、使いやすいツールをちゃんと選ぶこと、そして楽をすること、不完全でもいいということこういった考え方をちゃんと持てているかで成否が変わってくると思っています。
こういう認識を持っているか持っていないかは単なる精神論ではなく、成功するためのシステムの一部といってよいのではないでしょうか。
本来の管理というのは、たまに現状を確かめて悪い状態だったときに「しっかりしろ」というだけではなく、こういう構造的な問題に立ち向かうことを言うのかもしれません。
私たちKANAGATAYAは、今後も、積極的に情報発信を行っていきたいと考えています。
またそれと同時に
「うちではこうやって管理している」という意見や、
「ブログを読んで実践してみたけど、この部分はうまくいかない」などのご意見もお待ちしています。
それぞれの現場の知見を共有・交換し合うことで、よりよい金型管理の形を探っていければと思います。
もし、「こういう話題について書いてほしい」「直接会ってもっと多くの話を聞きたい」「勉強会を開いてほしい、勉強会に参加したい」などのご要望があれば、
ぜひお気軽にこちらからお問い合わせください。

