KANAGATAYAでは、プレス金型のメンテナンス・修理を承っています。
ただ、「金型メンテナンス」と言われても、実際にどんな作業をしているのか、イメージが湧く方は少ないのではないでしょうか。
金型に日頃触れていない方にとっては、なかなか見えづらい世界です。
そこで今回は、金型メンテナンスの中からひとつの場面を切り出してご紹介します。金型が工場に届いたとき、いちばん最初にやること——「そもそも、この金型は開くのか?」というお話です。
なお、様々な事例を紹介しているページもありますのでこちらももご覧ください。
金型のメンテナンスは「開けないと」何も始まらない
プレス金型は、上型と下型のセットでできています。
メンテナンスをするには、まずこの上下を分離する——現場では「金型を開く」と言います——ことが必要です。
金型の外が錆びていても、内側は綺麗ということはよくあります。
外側が錆びても金型としての機能には影響がないため、機能に影響があるところはしっかりメンテして外側はあまり気にしないという手入れの仕方も一般的だからです。
(もちろん、外側も錆がないのが一番ですが、そこは手間とのトレードオフになります)
したがって、外観がどうあれ実際に開いてみないと金型の状態はわかりません。
上型と下型は、金型にもよりますが「ガイドポスト」という柱で正確に位置決めされていることが多いです。
(小型な金型や精度がそれほど必要ではない金型ではガイドポストがないこともあります)。

金型の上下位置を正確に合わせ、開閉を安定させるガイドポスト。
このガイドポストが錆や固着で動かなくなっていると、金型は開きません。
だから、入荷した金型に対して最初にやるのは、「開くかどうかの確認」。開かなければ、開けるようにするところから仕事が始まります。
開くためには、まず「吊れるか」
金型は数十kg〜数百kg、大きなものではそれ以上の重量物です。上型を持ち上げて開くには、天井クレーンで吊る必要があります。

天井クレーンで金型を吊り上げている場面のイメージです。
※実際の写真ではなく、内容理解のためにAIで生成した画像です。
ここにも、実はひと手間あります。
ある程度大きな金型であれば、最初から吊り上げ用の金具や穴が備わっていることが多いのですが、比較的小さな金型にはそうした吊り点が付いていないことも珍しくありません。
その場合は、「吊りボルト」というボルトを金型のネジ穴に取り付けて、そこにワイヤーやフックを掛けて吊り上げます。

弊社で実際に使用している各種吊りボルトの陳列。赤丸で示したものが、金型の吊り上げに使用するT字型吊りボルトです。

長期保管されていたプレス金型に、吊り上げ作業用の吊りボルトを取り付けた状態。
ネジ穴が錆びていて、ボルトが入らないことも
ところが、ここでもうひとつ壁があります。
吊りボルトを入れようとしても、ネジ穴の中まで錆びていて、ボルトが入らないことがあるのです。
そんなときは、タップという工具で穴の中の傷んだネジ山を整える必要があります。タップ加工することによりボルトがきちんと掛かる状態に戻ります。
重量物を吊るためのネジ穴ですから、中途半端な掛かりでは危険。確実にボルトが効くまで、丁寧に仕上げます。

長期保管されていたプレス金型に吊りボルトを取り付けるため、錆びたネジ穴にタップを通している実際の作業写真です。
タップハンドルでネジ穴をさらい直す。地味な作業だが、安全に吊るための大事な一手間。
まとめ メンテナンスは「開ける前」から始まっている
今回ご紹介したのは、金型メンテナンスの本編に入る前の、いわば準備段階です。
- 入荷した金型が開くかを確認する
- 開くために吊れるかを確認し、必要なら吊りボルトを取り付ける
- ネジ穴が錆びていればタップ加工でさらい直す
「メンテナンス」と聞くと部品交換や研磨をイメージされる方が多いと思いますが、実際にはその手前に、こうした地道な工程があります。
金型のメンテナンスのイメージを持つうえで参考にしていただければ幸いです。
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