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2025.11.21

金型管理

金型管理にQRコードを導入する方法|経産省マニュアルを現場で再現してみた

今回のブログでは、金型の管理にQRコードを使う実践例を紹介します。

ほとんどコストをかけずに導入できるので、ぜひ参考にしてください。

金型にQRコードを印刷した紙がガムテープで固定されている

実際に、当社の金型にQRコードを仮に貼り付けた写真

 

 

金型管理にQRコードを使う目的

経済産業省が公開している『型管理運用マニュアル』の第2章3節「台帳と型の照合」では、
金型の管理をQRコード(*1)などを活用しDX化し、現物と台帳情報を迅速に突き合わせる方法が紹介されています。
(*1)QRコードは株式会社デンソーウェーブの登録商標です / QR Code is a registered trademark of DENSO WAVE INCORPORATED in Japan and in other countries.

経産省が公開している型管理運用マニュアルの13ページ目のスクリーンショット。QRコードを使ったシステムの例のところに矢印を追加して強調している。

型管理運用マニュアルより抜粋

実際、金型の運用が長期化すればするほど、「現物がどうなっているか」と「台帳に記載されている内容」が徐々にズレていくのは避けられません。

  • 改造したのに記録がない

  • メンテナンス履歴が紙に書かれたままで未反映

  • 現場では使われている名称と台帳の記載が違う

──こうしたズレが積み重なると、管理の手間だけでなく、誤発注・誤手配・メンテナンス漏れ・コスト負担の不透明化など、さまざまなトラブルに直結します。

逆に言うと、その管理の手間を省力化できれば、トラブルの回避ができます。そこが金型管理にQRコードなどを導入して管理をIT化する目的です。

QRコードで管理するメリット(現場での即時アクセス性)

現物を見たその場で更新できる仕組みが重要

ズレをなくす唯一の方法は、「現物確認 → その場で台帳更新」という流れを作ることです。
その場では紙に記録し、事務所に戻り、パソコンを立ち上げ、フォルダを探し、Excelを開き…という手順が必要になると、人間は必ず更新を後回しにします。
ここではいかに更新作業の面倒さを軽減できるかが重要です。

だからこそ、『型管理運用マニュアル』でもそういった観点からスマートフォンやタブレットなどを活用した管理、つまりDX化を有効な手法として紹介しています。

「QRコード付き管理システム=特別な専用IT」ではない

ここで少し立ち止まって考えたいのですが、

「QRコードを使った金型管理システム」と聞くと、

「どこかのメーカーが販売している専用ソフトを導入する話だろう」

と受け取る方は少なくありません。
実際、「QRコードと台帳を連携する」と言われて、具体的な構築方法まで想像できる方はそこまで多くないはずです。

これは決して理解不足やITリテラシーの問題ではありません。
単純に、こうした仕組みづくりが“見える化”された情報として世の中に出てこなかっただけの話です。

ここで伝えたいのは、次の一点です。

この仕組みは、特別な製品や専門開発が必要なものではない。
知っていれば、自社で構築できる。

つまり、「できる会社」と「やらない会社」の差は、技術力ではなく、方法を知っているかどうかだけだと感じています。

正直に言うと、私たち自身もこの仕組みを現場で正式運用しているわけではありません。
しかし、

もし必要になったら、明日からでも動かせるところまでイメージは整理できている。

という段階には来ています。

経産省が紹介しているようなシステムは決して大げさな専用システムではなく、ちょっと知識があれば明日からでも導入に向けた行動が可能なものなんだということをこのブログで示せたらと思います。

QRコードをつかった金型管理システムを実際につくってみよう

システムのイメージ図。写真はAIで生成したもので、実際のシステムとは関係ない

イメージ図

システムの分析

さて、まずここで型管理運用マニュアルで想定されている金型の管理システムについて少し考えてみたいと思います。
上記の型管理運用マニュアルのスクリーンショットを見る限り、

  1. 金型自体にQRコードが貼られている
  2. そのQRコードをスマートフォンで読み込むと金型の台帳にアクセスできる
  3. そして、その台帳の情報をスマートフォン上で更新できる

というシステムだと思われます。

必要なもの

このシステムを構築するうえで必要になるものは下記のものです。

  1. 金型そのもの
  2. スマートフォン、タブレット
  3. スマートフォンでアクセスできる金型台帳
  4. 金型に貼るQRコード

このうち、金型とスマートフォン等については特に問題ないでしょう。

問題は、3と4の台帳とQRコードです。

 

「スマホで更新できる台帳」が必要

QRコードを活用した仕組みを導入する前提として、スマートフォンからアクセスし、更新できる金型台帳が必要になります。

今回の目的は、現物を確認したその場で、スマホから台帳情報を更新することです。
そのため、閲覧しかできない台帳や、事務所のパソコンでしか開けない台帳では意味がありません。

たとえばQRコードを読み取ってアクセス舌先がPDF形式の一覧表では更新ができないため、意味がありません。
(PDFも編集はできますが、簡便とはいいがたいでしょう)

「クラウド化された台帳」であること

スマートフォンから台帳を扱えるということは、つまりインターネット経由でアクセスできるクラウド化された台帳だと考えていいでしょう。

このブログでも、金型台帳のクラウド化については繰り返し触れてきました。単純にクラウド化するだけならExcelを共有するだけでも可能です。
したがってこのクラウド化された台帳をどう作るか?っていう点は特に難しいことはないかと思います。

私たちが採用しているのは「Notion」

Notionというサービスのロゴマーク

クラウド台帳として利用できるツールはいくつかありますが、私たちはNotionを採用しています。

理由はシンプルで、金型管理において必要となる機能が自然と揃っているからです。

  • スマホ・タブレット・PCからアクセスできる

  • 権限設定が柔軟にできる

  • 金型ごとの詳細ページが自動生成される

  • 写真・図面・メモ・更新履歴を一元保存できる

  • リンク構造で情報が迷子にならない

Excelをクラウドで共有する形でも運用は可能ですが、「現物を確認→その場で更新」という今回の目的を考えると、Notionのようなナレッジ共有ツールのほうが相性が良いと感じています。
ExcelとNotionのようなナレッジ共有ツールの比較についてはこちらのブログでも紹介しましたので、よろしければご参照ください。

Notionのようなクラウドで使えるナレッジ共有ツールがDX化の鍵になります。

 導入ハードルは高くない

Notionは、1アカウントであれば無料で利用できます。
アカウント登録後すぐに運用を開始でき、特別な設備投資も不要です。

もちろん、台帳設計には多少の工夫や慣れが必要ですが、運用が始まってしまえば、

「台帳を閲覧するために事務所へ戻る」→ 「現場で更新が完結する」

という大きな変化が生まれます。

クラウド化された台帳について

クラウド化された台帳については上記までで紹介したブログで紹介しているのでそちらをご参照いただき、用意していただければと思います。
作業工数が多くて大変ということはあっても、技術的に難しいところはないはずです。

QRコードをつくろう

スマートフォンでアクセスできる金型台帳としては、私たちはNotionでつくった金型台帳を活用しています。
次は、この金型台帳にアクセスできるQRコードをいかに作成すればいいか?という点を紹介します。

QRコードの作り方

ご存じの方も多いと思いますが、QRコードは簡単につくることができます。
今回はWebページにアクセスするためのQRコードが必要なわけですが、それはChromeやEdge等のWebブラウザの標準機能を使えば簡単に生成できます。

ある金型の詳細ページにアクセスするためのQRコードを生成する過程を撮影した動画がこちらになります。
30秒程度であっさりQRコードを取得できたことがわかると思います。

作業としては、QRコードでアクセスしたいページを開いて、右クリックをして、「このページのQRコードを作成」をクリックするだけです。
ChromeでQRコードにしたいページを右クリックしたときに表示される”このページのQRコードを作成”という選択肢が矢印で強調されている

ちなみに実際に取得したQRコードが下記のものです。ちなみに真ん中に恐竜がいるのはChromeの仕様によるものです(私の趣味でそうしてるわけではありません)。

サンプルの金型台帳のうち管理番号が1番の金型の詳細ページへのQRコード

サンプル金型台帳の管理番号1(型番FM-AA-0001)へのQRコード

 

QRコードを実際に金型に貼ってみる

実際に金型に貼ってみました。試しなので、紙に印刷してテープで雑に固定しただけですが、これで十分イメージは伝わると思います。
正式な採用の際にはラベルシールを印刷して貼り付けたりするかと思います。

金型にQRコードを印刷した紙がガムテープで固定されている

実際に印刷して金型に張り付けた様子

QRコードの読み取り機能やカメラ機能でQRコードをとらえれば、この金型の詳細ページまでのアクセスがスマートフォン上で簡単にできるようになります。
下記のスクリーンショットは実際にスマートフォンのカメラでQRコードを撮影範囲に収めた様子です。自動的にQRコードを読み取って、下に表示される「Chromeで開く」をタッチすれば、金型の詳細ページに遷移します。

スマートフォンのカメラでQRコードを読み込んだ様子。QRコードのURLにアクセスするためのボタンが表示されている

QRコードをカメラで読んだ様子

 

このようにすれば、使用の前後や棚卸し時等にQRコードを読んで、台帳の情報をスマートフォンで確認し、現実と合致しているかというのをスマートフォン上で確認するということができるようになります。

たとえば、棚卸し時にQRコードを読んだら、棚A-1-1にあると台帳に書いてあったが、実際にはB-2-2にあったなら、その場で金型台帳の情報をB-2-2に変えてしまえばいいのです。
台帳の更新がだれでも、簡単に、現場で、できるようになります。
その結果、台帳の情報ができる限り最新情報に保てるようになるはずです。

上記の例では金型にテープでQRコードを貼っただけですが、それでも機能としては立派なDX化が実現できています。

まとめ

金型台帳のクラウド化はそれ自体は難しいことはありません。
台帳を作成すること自体の大変さはありますが、クラウド化自体には技術的な難しさはないはずです。

またQRコードについても、かなり簡単に取得できるということが分かったと思います。
この点についても技術的な難しさはありません。

Notionは1アカウントまでなら無料で活用できますし、QRコードについても無料で生成できます。
スマートフォンは必要ですが、設備投資として過大ということはないでしょう。
会社のセキュリティポリシー次第ではありますが、会社によってはいわゆるBYOD(Bring Your Own Device, 自分の端末を使う)を採用しており、社員がそれぞれ個人で使っているスマートフォンを仕事でも利用していいというポリシーを採用する会社もあります。

そういった会社では、スマートフォンへの投資すら不要となるでしょう。

経産省の型管理運用マニュアルを読んだときに、QRコードを用いたDX化と聞いて、ハードルを高く感じた会社もあると思いますが、
実際には金型台帳をクラウドで作成さえしていれば、あとは簡単にQRコードを管理に導入できることがわかったのではないでしょうか。

もちろん、保管している金型が何千とある場合にはそれにQRコードを貼り付けるだけでも大仕事です。
ただ、それは工数がかかるというだけで、技術的な難しさではないということもご理解いただけると思います。

今回のブログで、技術的には簡単だということが伝わり、型管理改革に一歩踏み出すための「きっかけ」になれば嬉しく思います。

次回ブログ

今回見てきたQRコードを、どのように金型に貼り付けるかという点は意外と重要です。
銘板をつくり固定する、ラベルを印刷して貼り付ける等いろいろなアイディアがあると思います。

次回のブログでは、その中でも、「これなら簡単でいいんじゃないだろうか?」と思ったアイディアを紹介します!

ぜひご覧ください。

金型管理にQRコードを導入する方法②|QRコードの貼り方実践編


 

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クラウドで金型台帳を一元管理|Notionを使った管理方法と実例公開


 

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