はじめに:金型管理で本当に重要なこと
以前のブログでは、Notionでつくった金型台帳を紹介しました。
当然のことながら、適正な型管理は台帳を作っただけでは終わりません。
それを目的に向けて活用にしていくことが必要です。
いま、金型管理の現場で最も注目されているテーマのひとつが「廃却」です。
長年、使われていない金型でもそのまま保管しなければならないことが中小企業にとって重荷になってきました。
ここにメスを入れ、不必要な金型を適切に廃却すること、これが金型管理の適正化にとって重要です。
この点については、経済産業省が公表している「型管理運用マニュアル」でも述べられています。
実際、7ページにおいて、一定年月経った金型については廃却の申請などを行うルールの策定を求めています。

型運用マニュアルからの抜粋
そこで今回のブログでは、実際にNotionでつくった台帳がどのように不要な金型の廃却を支援できるのかについて確認したいと思います。
AIを活用して関数を生成する実例なども紹介してますので、ぜひご覧ください。
廃却判断の基本は「最終利用日」
最終利用日は必須
上記に掲載した経産省「型運用マニュアル」にも、“10年以上生産がなかった”等最後の利用日からの経過年月を基準として、廃却の判断を進めるべきことを前提にしています。
したがって、台帳には最終利用日というものが記録されていなければなりません。これは強く推奨します。
今回はNotionでの金型管理を前提としているためNotionを中心に話が進みますが、Excelで作っていようと同じことです。
どんな台帳であれ、最終利用日は台帳に含まれているべきです。
こちらで公開しているサンプルのNotion金型台帳にも、最終利用日が入っています。

グループ化した金型台帳
最終利用日の更新頻度は?
理想的には、受発注システムなどと連携し、その金型を使う部品の発注があったらリアルタイムで更新されることです。
これは実現可能ですが、各会社の受発注システムとの連携が必要であるため、ここでは紹介しないでおきます。
次善の策としては、手動での更新ということになります。
その場合、どの程度の頻度で更新するのがよいか?ということが問題になります。
私たちはこの点については月に1度更新すれば十分と考えています。
金型の廃却は最後の利用から何年たったか?というスパンの話になります。
したがって、毎月1度、先月の受注情報を見ながら更新する、というような運用がされていれば金型の管理としては十分なはずです。
表が「あるだけ」では伝わらない
さて、金型の適正管理において重要なのは、顧客側に金型についての情報が伝わることだと思います。
台帳を作り、それを共有しただけでは不十分で、必要な情報がより伝わりやすくするための工夫が必要だと考えています。
顧客や社内の担当者がひと目で現状を理解できるように、
いくつかの「見せ方の工夫」を取り入れることをおすすめします。
① 経過年数の自動計算
まず取り入れたいのが、最終利用日からの経過年数を表示する項目です。
たとえば「この金型は最後にいつ使ったのか?」という情報は確かに大切ですが、
本当に知ってもらいたいのは「そこから何年使っていないのか」という情報のほうです。
これは、預かる側の企業にとってだけでなく、顧客にとっても重要な情報です。
何年も使われていない金型を無償で預け続けていることの非効率さを伝え、
「そろそろ廃却を検討すべきだ」と気づいてもらうきっかけになります。
私たちが公開しているサンプル台帳にも経過年数の欄が設けられています。

サンプル台帳から抜粋
自動計算とAIの活用
経過年数の数値は、関数で自動計算するのが楽でいいでしょう。
Notionを活用している場合、その関数はAIにより簡単に生成できます。
実際に、関数をAIに作ってもらう様子がこちらでご覧いただけます。
AIを金型管理にも活用することは重要です。
こういうことがしたい、というリクエストをAIに投げればそれを作ってくれるということは、実現できることの幅が大きく広がっていることを意味します。
かつては関数の知識が十分でないとできなかったことが、今はAIによって簡単にすることができます。
② 最終利用日と経過年数を「見せたい場所」に置く
Notionの利点の一つは、プロパティ(項目)を自由に並べ替えられることです。
つまり、「最終利用日」や「経過年数」を顧客に見せたい位置に移動させることができます。
実際にこれらの項目を簡単に移動させられる様子をこちらの動画からご覧いただけます。
たとえば顧客と台帳を共有する際、
一覧の最初の列に「経過年数」を配置しておくだけでも、
「この金型はもう8年も使っていないのか」と自然に意識してもらえるようになります。
重要な情報を顧客が「意識しやすい位置」におく工夫を行うことが大切です。
③ グループ化で「見える化」する
さらに、Notionではグループ化機能を使うことで、
「どの金型がどれくらい使われていないか」を視覚的に把握できます。
グループ化を使って最終利用年でグループ化すると、古いものから羅列されるようになります。

グループ化した金型台帳
このグループ化表示にすれば、古い金型をわかりやすく表示できます。
また、各グループに何個の金型が登録されてるかも自動でカウントされるので、どのぐらいの量があるのかも簡単に把握できます。

4. 伝えるためのツールとしての台帳
金型台帳は従来は、社内で金型を管理するためのものでした。
しかし、現代では金型に関する情報を預かり側と顧客でやり取りするコミュニケーションツールになっています。
廃却すべき金型を整理するためには、
現状を正確に「伝える」ことが欠かせません。
その意味で、Notionはとても優れたツールです。
見た目を整えたり、AIのサポートを受けたりしながら、
誰でも簡単に伝わる形で情報を整理できます。
もちろん、こうした取り組みはExcelでも実現可能です。
関数や条件付き書式を使えば、同じように可視化はできます。
大事なのは、伝えることを目的に台帳をつくる姿勢です。
ExcelであれNotionであれ、
「どうしたら相手に伝わるか」という観点で工夫していくこと。
これが、これからの金型管理に求められる視点ではないでしょうか。
私たちKANAGATAYAは、今後も、積極的に情報発信を行っていきたいと考えています。
またそれと同時に
「うちではこうやって管理している」という意見や、
「ブログを読んで実践してみたけど、この部分はうまくいかない」などのご意見もお待ちしています。
それぞれの現場の知見を共有・交換し合うことで、よりよい金型管理の形を探っていければと思います。
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