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2026.01.26

その他

プレス金型におけるバッキングプレートとは?必要な理由を解説

バッキングプレートとは

プレス金型の構造を見ると、
パンチホルダーとパンチの間に「バッキングプレート」と呼ばれる部品が組み込まれていることがあります。

まずは、一般的なプレス金型の構造を図でバッキングプレートを確認してみます。
(下記の図では他のバッキングプレートと区別するために、パンチバッキングプレートと書かれています。本ブログでは、パンチバッキングプレートを指して「バッキングプレート」と呼称します。)
プレス金型の模式図

画像の出典:プレス金型の基礎知識|部品加工担当&金型初心者が知るべき構造・種類・メリット – 精密プレス金型の南雲製作所
https://nagumo-ss.com/tsubuyaki/pressmold_basicknowledge/
(最終アクセス:2026年01月23日)*赤枠は引用者による追記

参考書を見ると、バッキングプレートの役割は

「パンチからの衝撃を受け止める」

と説明されていることが多いと思います。

例えば

「パンチの衝撃によるパンチホルダの傷つき防止の役目のために,パンチ頭部とパンチホルダーの間に挿入する当て板」
—山口文雄、鰐淵淳、小渡邦昭(1993)『基本プレス金型実習テキスト』日刊工業新聞社、p.42

のようにバッキングプレートが解説されます。

し、この説明だけでは
「なぜバッキングプレートが必要なのか」
が、正直あまりよく分かりません。

  1. なぜ衝撃を受け止めるのがパンチホルダーではいけないのか
  2. 逆になぜ、バッキングプレートならパンチからの衝撃を受け止められるのか。

このあたりに答えていないからです。

そこでこの記事では、
バッキングプレートが必要になる理由 を、改めて解説します。

*なお、バッキングプレートは上記のようにパンチからの衝撃を受け止めることの他にも、部品の脱落防止(ストリッパバッキングプレート)や高さ調整等の目的で挿入される場合もあります。
しかし、このブログでは、パンチからの衝撃を受け止める役割についてのみ説明します


バッキングプレートが必要になる場面

バッキングプレートは、すべての金型に必ず入っているわけではありません。
特に必要になるのは、パンチ径が小さい場合 です。

実はこの「小径パンチ」という点に、重要なヒントがあります。


小径パンチで何が起きているのか

プレス加工では、下死点付近でパンチに非常に大きな力がかかります。

ここでパンチ径が小さいと、どうなるでしょうか。

  • 力そのものは大きい

  • しかし受ける面積は小さい

つまり、単位面積あたりの圧力が極端に大きくなる わけです。


パンチとパンチホルダーは、同じ材料ではない

ここでもう一つ重要なのが、材料の違い です。

パンチ

  • 耐摩耗性・耐久性が求められる

  • SKD11等の硬い工具鋼が使われることが多い

パンチホルダー

  • コストや加工性を考慮

  • SS400など、焼き入れをしない比較的柔らかい材料が使われることが多い

つまり、

硬い金属(パンチ)が、
小さな面積で、
柔らかい金属(パンチホルダー)を強い力で押す

という状態が起きているわけです。


そのまま受け止めると、何が起きるか

この状態で、パンチが直接パンチホルダーに当たっているとどうなるか。

答えはシンプルで、
パンチホルダーがへこみ、塑性変形します。

特に小径パンチでは力が集中するため、この問題が顕著になります。

つまり上述した『なぜ衝撃を受け止めるのがパンチホルダーではいけないのか』という疑問については、

  • パンチには大きな力がかかるので、何らかの方法その力を受け止める必要がある
  • 特にパンチが小径だと、面積あたりの力が大きくなってしまう。
  • パンチは硬い金属が使われており、一方パンチホルダーは比較的柔らかい金属が使われてる
  • その結果、パンチホルダーで受け止めると、硬い金属が強い力で押し込んでくるので、パンチホルダーが変形してしまう。

と回答することができます。


解決策は「力をなくす」ではなく「分散する」

では、この問題をどう解決するか。

プレス加工に必要な力そのものを小さくすることはできません。
となると、やるべきことは一つです。

力を分散する。

しかし、パンチ径は小さい。
そのままでは分散できない。

そこで登場するのが、バッキングプレート です。


バッキングプレートの本当の役割

バッキングプレートには、次の2つの役割があります。

① パンチの力を受け止められる硬さを持つ

パンチと直接当たるため、
パンチに押されても変形しない程度の硬さを持った材料が使われます。

② 力を広い面積でパンチホルダーに伝える

バッキングプレートは、パンチよりも接触面積が広く設計されます。
そのため、

  • パンチ → バッキングプレート:小径だが硬さで受け止める

  • バッキングプレート → パンチホルダー:広い面積で力を分散して伝える

という力の流れが作られます。

結果として、パンチホルダーは局所的に押し潰されることがなくなります。


「衝撃を受け止める」だけでは伝わらない理由

バッキングプレートの説明として
「パンチの衝撃を受け止める」という表現が使われるのは間違いではありません。

しかし、それだけでは

  • なぜ必要なのか

  • なぜパンチホルダーではダメなのか

が伝わりません。

本質は、

  • パンチは硬い

  • パンチホルダーは柔らかい

  • 小径パンチでは力が集中する

この条件が重なったときに起きる 局所的な変形問題 を、

  • 硬さ

  • 面積

この2つで解決している部品が、バッキングプレートだという点にあります。


まとめ:バッキングプレートの要点

  • バッキングプレートは単なる「当て板」ではない

  • 硬さでパンチの力を受け止め

  • 面積でその力を分散し、パンチホルダーを守っている

ここを理解しておくと、
「なぜこの金型にはバッキングプレートが入っているのか」
「なぜ小径パンチで特に重要なのか」
が、かなりクリアになるはずです。

他にもプレス機の構造について解説した記事がありますので、もし興味があればぜひご覧ください。

フライホイールがエネルギーをためるとは

クランクプレスが下死点で理論上、「無限大の力」を出す理屈を解説