金型保管と下請法──無償保管問題は大企業だけの話なのか?
下請法と関連した金型の無償保管問題については、これまでも繰り返し下請法違反の摘発事例が公表されてきました。
報道で取り上げられる企業名を見ると、その多くが大企業であることは事実です。
そのため、
金型の無償保管は、大企業特有の問題ではないか
という印象を持たれがちです。
しかし、結論から言うと、すでに中小企業も金型の無償保管により摘発されています。
既に金型の無償保管問題は大企業だけの問題ではない、という事実が実態を整理すると見えてきます。
金型の無償保管は下請法上、典型的な違反類型
金型を無償で保管させる行為は、
下請法上、これまでも繰り返し問題視されてきました。
確かに、大企業の方が取引先に対する影響力が大きく、
-
無償保管を求めやすい
-
長期間にわたるケースになりやすい
-
件数・規模ともに表に出やすい
という構造があります。
その結果、報道では大企業の事例が目立つことになります。
令和7年の摘発状況を見ると
ここで、令和7年の
**下請法違反(金型保管・無償保管関連)**の摘発状況を整理します。

※勧告年月日および被勧告企業は、公正取引委員会公表「下請法勧告一覧(令和6年度・令和7年度)」による。
※中小企業者該当性および備考は、各社公式ウェブサイト等の公開情報をもとに筆者が整理・判断した。
(令和7年・計21件)
・大企業:16件
・中小企業:5件
件数だけを見ると、確かに大企業が大半です。
しかし注目すべきなのは、すでに中小企業も摘発されているという点です。
ここでいう「中小企業者」とは
上記の表でいう中小企業者とは
中小企業基本法における「中小企業者」の定義に該当するかどうかで判断しています。

画像の出典:e-Gov 法令検索 中小企業基本法
https://laws.e-gov.go.jp/law/338AC0000000154
(最終アクセス:2025年12月25日)
具体的には、
-
資本金が 3億円以下
-
従業員数が 300人以下
この どちらか一方に該当すれば中小企業です。
つまり、
-
規模的にはそこそこ大きく見える
-
業界内では存在感がある
そうした企業であっても、
法律上は中小企業に該当するケースは珍しくありません。
大企業グループ傘下というケース
さらに、令和7年に摘発された中小企業5件のうち、
3件は大企業グループの傘下企業でした。
この点については、
-
形式上は中小企業であっても
-
親会社が大企業である以上、その「威光」や影響力を背景に
-
取引慣行や力関係が、部分的には大企業と同質になっているのではないか
という見方も成り立ちます。
実際、こうしたケースでは、
当該企業単体というよりも、
大企業である親会社の取引姿勢や業界内での影響力が反映されている
と捉えることもできるでしょう。
その意味では、
「中小企業者が摘発されている」と単純に言い切ることには、
やや慎重さが求められる部分があるのも事実です。
ただし、下請法の運用においては、
あくまでその会社自身の行為として評価されることになります。
そして重要なのは、
こうした「大企業グループ傘下」という説明だけでは、
すべての事例を説明しきれないという点です。
親会社と無関係な中小企業も摘発されている
しかし、重要なのは、
大企業グループとは無関係な中小企業も、すでに摘発対象になっているという事実です。

つまり、
-
「大企業じゃないから」
-
「うちは中小だから」
-
「これまで問題になっていないから」
といった理由で、
下請法と金型保管の問題から無縁でいられるわけではありません。
年の後半に見えてきた傾向
令和7年の摘発を時系列で見ると、
-
年前半:摘発は大企業中心
-
年途中以降:中規模・中小企業にも広がり始めている
という傾向が見えてきます。
これは、
会社規模にかかわらず、
金型保管を含めた取引条件を下請法の観点で見直すべきだ
という、公正取引委員会からの
明確なメッセージと受け取るのが自然でしょう。
来年以降は中規模の会社の摘発事例も増えていくことが予想できます。
下請法と金型保管は「他人事ではない」
金型の無償保管問題は、
報道で名前が出る大企業だけの話ではありません。
すでに、定義上は中小企業に該当する会社も摘発されている。
この事実は重く受け止める必要があります。
下請法と金型保管の問題は、
「関係あるか・ないか」ではなく、
**「いつ当事者になってもおかしくない問題」**として捉えるべき段階に来ています。
どういったケースが金型の無償保管として下請法上問題になるのかをまとめたブログもありますので、
そちらもぜひご覧ください。
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