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2026.03.02

その他

鉄板にSDSは必要?溶接・レーザー加工とプレスで異なる安全管理の考え方

まず確認したい、SDS管理の重要性

SDS(安全データシート)の管理は、労働安全衛生法上、非常に重要な項目です。
薬品などを使う労働環境ではSDSの管理が安全のためにとても重要です

特に昨今では、職場における化学物質の管理が厳格化しており、管理対象となる物質が年々増加しています。
具体的には2022年の労働安全衛生法の改正以降、管理対象(リスクアセスメント対象物)は改正前の674種類から、2026年4月までに2,300種類になります。

法改正により化学物質リスクアセスメント対象物質が674物質から令和8年には約2,300種類へ拡大予定であることを示した図解。世の中の化学物質約70,000種類との比較も表示されている。

引用元: (職場の化学物質管理総合サイト | ケミサポ 最終アクセス: 2026年2月26日

化学物質の管理においては、その物質の危険性がかかれているSDSが起点になると言っても過言ではなく、SDSの管理が重要です。

労働基準監督署の監査でも、

  • SDSが整備されているか

  • 作業者がすぐ閲覧できる状態か

  • 危険有害性が周知されているか

といった点は、よく確認されるポイントかと思います。


 

SDSの管理について

SDSは、化学物質の

  • 危険性

  • 取り扱い方法

  • 応急措置

  • 保管方法

  • 廃棄方法

などを定めた標準化文書です。

世界共通の規格に基づいて作られています。

特に、製造業の現場では、

  • 絞り油

  • 切削油

  • パーツクリーナー

  • シンナー

  • 有機溶剤類

などで管理している会社が多いでしょう。

ちなみに、各化学物質の容器にある下記の写真のような危険性を示すピクトグラム等も、SDSと同じ制度から表示することが求められてるもので、
特定の物質を含むものについては表示が義務化されています。

ブレーキ&パーツクリーナー速乾タイプの缶に表示された危険有害性情報。可燃性マークや健康有害性のGHSピクトグラムが確認できる。

ブレーキ&パーツクリーナーの容器表示例。GHSピクトグラムと危険有害性情報が明示されている。


 

鉄板にもSDSはある

ここで、少し意外な話ですが、鉄板にもSDSはあります。

鉄鋼メーカー各社は、鋼材についてSDSを発行しています。
例えば、下記のものは日本製鉄の鋼板等についてのSDSです。

鋼材(普通鋼板)の安全データシート(SDS)の記載例。GHS分類や危険有害性情報、水生環境有害性などが表で示されている。

鋼材の安全データシート(SDS)(引用元:一般社団法人日本鉄鋼連盟 鋼材SDS情報ページ  最終閲覧 2026年2月26日)

しかし現場では、

  • 有機溶剤は管理している

  • 油類も管理している

  • でも鋼材は何もしていない

というケースが意外と多い気がします。

おそらく、SDSによる管理が必要な物質の代表例として浮かぶのが、シンナー等の有機溶剤等主に液体のものだからではないでしょうか。

固形物だからSDSは要らない?

確かに、固形物については、一定の条件のもとSDSの提供対象から除外されます。

化管法Q&A問18の抜粋。固形物で取扱過程において固体以外の状態にならず粉状・粒状にならない製品はSDS提供義務の対象外と記載されている。

引用元: 化管法SDS制度に関するQ&A(METI/経済産業省)最終アクセス: 2026年2月26日

鉄板は加工される

しかし、上記のスクリーンショットをみてもわかるように、SDSが不要なのは取り扱いの過程で固体のままで粉塵等にならないことが必要です。

鉄板の加工は様々ですが、レーザーによる切断や溶接を行う現場では、粉塵・ヒュームが発生することがあり、これは「粉状又は粒状」になると言えます。
したがってこれらの加工を行う現場では、『固形物』に該当せずSDSが必要になります。

一方で、プレスだけをやっているというような現場では、プレスでは固体以外の状態にはなりませんし、かつ、粉状又は粒状にもならないため、固形物のままです。
その場合には、鉄板のSDSを職場で備え付ける必要はないでしょう。


 

SDS制度の本質について

SDSが必要になるものを一般化すると、

何らかの経路で人体に入り、有害な影響を与える可能性があるもの

ということになります。

つまり、「物そのもの」ではなく、
ばく露の可能性が本質です。

同じ鉄板でも、現場が違えばリスクは変わる

同じ鉄板を扱っていても、

  • レーザー加工や溶接を行う現場

  • プレス加工のみの現場

では、鉄が人体に入り込む可能性は変わります。

溶接や切断を行えば、

  • 金属ヒューム

  • 金属粉じん

が発生し、吸入リスクが生じます。

一方、プレスのみで粉じんが発生しない工程であれば、
そのリスクは相対的に小さくなります。

重要なのは、

自分たちの現場で、どのような危険性が生じ得るのか

をきちんと認識することです。

本当に必要なSDSを集めるということ

SDSを「集めること」が目的ではありません。

本当に必要なSDSを把握している状態というのは、自分たちの現場のリスクを理解している状態とも言えます。

  • 溶接をしているのに、鋼材のSDSがない

  • 粉じんが発生する工程があるのに、その評価をしていない

これは問題です。

逆に、

  • プレスのみで加工している

  • 粉じんやヒュームの発生が想定されない

にもかかわらず、制度の趣旨を理解せずに機械的に書類だけを集めている状態も、本質的とは言えません。

(もちろん、過剰にSDSを集めていることが労基署などから指摘対象になることはないと思いますが)

制度を理解し、過不足なく

SDS制度は、書類管理の制度ではなく、危険有害性を理解し、適切な対策を講じるための制度です。

大切なのは、

  • 現場の実態を見つめること

  • リスクを正しく把握すること

  • それに見合った情報管理を行うこと

過不足なく、安全管理を行う。それが理想的な姿かと思います。

今回のブログがその理想的な姿を実現する一助になれば幸いです。