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2026.05.08

その他

応力ひずみ線図において終盤応力が下がる理由

引張試験で応力が下がるのはなぜか

以前もブログで応力ひずみ線図を取り上げたことがあります。

応力ひずみ線図で理解する「強度・延性・靭性・硬さ」

応力ひずみ線図は、材料の特性を知るうえでとても重要なものであり、プレス加工の教科書には必ず載っているものかと思います。

応力–ひずみ線図を見ていると、ひとつ気になることがあります。

グラフの後半で、応力が下がっていくことです。
下記の図でもDからFにかけて応力は低下していきます。

引張試験における応力ひずみ曲線。降伏点(A)、塑性域(B)、下降伏点(C)、最大応力(D)、引張強度(E)、破断(F)の各点を示した図。

応力ひずみ曲線(出典:[キーエンス「応力とひずみの関係」](https://www.keyence.co.jp/ss/products/recorder/testing-machine/power/stress-strain.jsp))

さて、このグラフを見て疑問に思うことがあります。
それは、「なぜ力を弱めてしまうのか?」ということです。

つまり、Dより右側でなぜ応力がさがるのでしょうか?

引張試験というのは材料を引っ張って破断させる試験です。
直感的には、かける力をどんどん強めて、より伸びるようにしていくものではないか?なぜ力を下げてしまうのか?という疑問が浮かぶのではないでしょうか。

今回はそこを考えてみたいと思います。

「真の応力では下がっていない」は疑問への答えになっていない

この疑問に対して、こういう説明がなされることがあります。

「グラフに示されている応力は公称応力といって、断面積を試験前の初期値で固定して計算している。
実際にはネッキング(くびれ)によって断面積は小さくなっているので、
リアルな断面積で計算した真の応力で見れば、グラフは右肩上がりのままだ」

これ自体は正しい説明です。

応力は「荷重 ÷ 断面積」で算出されますが、応力ひずみ線図における応力の計算では、この断面積は初期値から変わりません。
初期値というのは、試験を開始する以前の金属片の状態を指しており、引張試験を開始したあとに、どれだけくびれが生じて断面積が小さくなっても、
その変化は考慮せず、常に、初期値の断面積を利用します。

この断面積に初期値を利用して計算される応力のことを『公称応力』といいます。

一方で、実際には試験片はその断面積を引張試験中に大きく変化させているわけで、その断面積の変化を考慮して、算出される本当の応力を、『真応力』といいます。
そして、真応力をつかった応力ひずみ線図を描くとしたらそのグラフは右肩上がりに応力があがっていきます。

 

ただ、この説明によって、
最初の疑問に完全に解消されるのか?というと、まだ疑問が残ると思います。

前述したように、応力ひずみ線図における応力の式は「荷重 ÷ 断面積」であり、断面積を初期値で固定しています。
断面積の値が変わっていないのに、応力が下がっているということは、荷重そのものが下がっているということになります。

ではなぜ荷重を下げているのでしょうか?

真応力ベースでは右肩上がりだよ、と説明したところで、それは結果の話であり、荷重を下げる理由にはなり得ないでしょう。
荷重を上げ続けても、真応力は右肩上がりになるのですから、真応力ベースで右肩上がりであることは荷重を下げる理由にはなりません。

この疑問も解消したいと思います。

引張試験は「伸びの速度」を制御している

さて、この話は応力ひずみ線図の話です。
そして、応力ひずみ線図において、応力(そして、応力を算出するための荷重)の変化に疑問があるとすれば、ひずみが関係あると考えるのが自然です。

引張試験は、荷重をコントロールしながら引っ張っているわけではありません。
つまり、荷重を「徐々に強めていく」というように、荷重を数字を上昇させる方向性でコントロールして試験を行っているわけではないのです。

引張試験においては、試験片の伸びる(つまり、ひずむ)速さを一定に保つように試験を進めています。
単位時間あたりのひずみの値の変化が一定になるように、「1分間に何mm伸ばす」という速度を固定する方式で試験が行われているのです。

この前提があると、グラフの動きが自然に説明できます。

ネッキングが進んで試験片が局所的に細くなると、その部分の変形抵抗が低下します。変形しやすい状態になるということです。
そうなると、同じ速度で伸ばし続けるために必要な荷重は、自然と小さくなっていきます。

材料が変形しやすくなったことで、必要な荷重が自然に下がったということです。

つまり、「なぜ荷重を下げるのか?」という疑問に対しては、
「そもそもひずみの変化が一定になるように伸ばしていきたい」という要請があり、
試験中にネッキングが生じて局所的に弱いところが生じた結果、設定されたひずみの変化を確保するために、より弱い荷重で足りるようになった。
だから、荷重を下げた

という回答になるかと思います。

まとめ

今回は、応力ひずみ線図において、なぜ応力が最後のほうに下がるのか?という点について説明してきました。
応力ひずみ線図については下記のブログでも説明しているので、ぜひご覧ください。

応力ひずみ線図で理解する「強度・延性・靭性・硬さ」

 

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